BPAフリーとは、食器や食品容器の原材料に使用される化学物質・BPA(ビスフェノールA)を含まないことを意味します。BPAの健康リスクが指摘されたのを契機に、乳幼児向け製品を中心にBPAフリーの基準が厳しくなりつつあります。
EUやアメリカでは規制が進む一方、日本では明確な禁止措置はありません。本記事では、BPAの影響やBPAフリーの必要性、各国の取り組みについて詳しく解説します。
- BPAフリーとは何か?
- 各国のBPAに関する規制
- BPAフリー製品の安全性と選び方
BPAフリーとは?
BPAフリーとは?

BPAフリーとは、食器や食品容器などの原材料に使われる化学物質・BPAを含まないことを指します。近年、BPAが持つ健康リスクが指摘され、特に赤ちゃんや子どもが使う製品ではBPAの規制が厳しくなりました。
BPAやBPAフリーの必要性について、詳しく見てみましょう。
そもそもBPAとは
そもそもBPAとは
BPAとは、プラスチックでできた製品に使用される化学物質の一種です。ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂など、エンジニアリングプラスチックの主成分として利用されることが多いです。
BPAは軽くて耐久性があり、透明度が高いことから、食品容器や水筒、哺乳瓶、電化製品、自動車部品、レシートの感熱紙など、日常生活のあらゆる製品に用いられています。生産コストが低く、加工しやすいことから、長年にわたり幅広い分野で活用されてきました。
しかし、近年ではBPAの健康リスクが指摘され、企業はBPAを使わない製品の製造および普及が求められています。
BPAフリーの必要性
BPAフリーの必要性
私たちの身の回りには、BPAを含む製品が数多く存在しています。しかし、1997年ごろからBPAの毒性についての研究が進み、安全性が疑問視されるようになりました。
特に食品容器やボトルなどに含まれるBPAは、熱や酸性の液体によって溶け出すリスクがあります。
BPAが体内に吸収されると、エストロゲン(女性ホルモン)に似た働きをすることが判明しており、以下の症状・病気のリスクが増加します。
- ホルモンバランスの乱れ
- 不妊症
- 発達障害
- がん
これらの因果関係を明確にする裏付けはできていません。一方で、すでに多くの国がBPAの使用を制限し、安全な代替素材の開発が進められています。
また、BPAはプラスチックだけでなく、金属製の飲み口やキャップ部分などに含まれているケースもあります。安全を考慮してBPAフリー製品を選ぶときは、部品に樹脂が使われていないかも確認しましょう。
消費者がBPAによる健康リスクを理解し、安全性の高い製品を提供するメーカーを見極めることが重要です。BPAフリーへの取り組みを積極的に行っている企業やブランドを選択することで、リスクを減らせます。
BPAフリーに関する各国の取り組み
BPAフリーに関する各国の取り組み

BPAの安全性を巡る議論が続くなか、世界各国ではBPAフリーに向けた規制や基準の強化が進められており、特に欧米では厳しい法規制が敷かれています。日本ではいまだに明確な禁止措置はありませんが、海外の動向を踏まえて、基準の見直しや指針の作成を進めている状況です。
各国におけるBPAフリーの取り組みについて、詳しく見てみましょう。
海外での取り組み
海外での取り組み
BPAフリーに向けた規制は、欧米を中心に厳しくなっています。特にEUやアメリカでは、食品包装や乳幼児向け製品に対するBPAの使用制限がかかり、消費者保護の観点からも強化が図られています。
国ごとに規制内容や対象範囲は異なりますが、健康面への配慮から多くの国が慎重に対応しているのが現状です。
EUでの取り組み
EUでの取り組み
EUは欧州食品安全機関の主導でREACH規則を定め、化学物質の安全性を厳しく管理しています。REACH規則では、高懸念物質に該当する化学物質について、特別な認可の取得を求めており、BPAもその対象です。
フランスを始めとする一部の国は、食品包装や食品に直接触れる製品へBPAを使用することを全面禁止するなど、より厳しい措置を導入しています。
ほかのEU加盟国も、BPAの安全性に関する研究結果をもとに独自の規制を検討中です。加えて、欧州食品安全機関はBPAの人体への影響を引き続き調査しており、将来的にさらなる規制強化が行われる可能性も考えられるでしょう。
こうした厳しい基準のもと、EUではBPAフリーの需要が高まり、多くの企業が代替素材を用いた製品開発を進めています。
REACH規則については、以下の記事もご参照ください。
参考:ビスフェノールA|国税庁
アメリカでの取り組み
アメリカでの取り組み
アメリカでは、2012年に食品医薬品局がBPAを含む哺乳瓶やシッピーカップの使用を禁止し、乳幼児向け製品に関する規制を強化しました。また、BPAを使用した食品包装材を販売する場合には、間接食品添加物または食品接触物質として、FDAによる販売前の安全性評価を受けなければなりません。
特にカリフォルニア州では、BPAを含む製品に対して警告表示を義務付ける「プロポジション65(化学物質に関する警告制度)」を義務化しています。この制度によって、消費者はBPAのリスクに関する情報を得られるようになりました。
さらに、カナダでもBPAに対する規制が強化されており、BPAを使った哺乳瓶の輸入・販売が禁じられています。
参考:よくある質問プロポジッション65 ジェトロ農林水産・食品課
日本での取り組み
日本での取り組み
日本ではBPAの使用自体は禁止されていませんが、厚生労働省により、食品容器や包装材に関する規制が一部設けられています。厚生労働省は食品安全基準を通じてBPAの溶出量を管理しており、2008年に海外の研究結果を基にQ&Aを作成しました。
そのなかで「現在の基準内であれば成人には影響がない」としながらも、以下の点を指摘しています。
- 公衆衛生の見地からできる限り体内へ入れるのを減らすべき
- 胎児・乳幼児の食品容器は別の材質のものを選ぶことも選択肢の1つ
- 国内外の情報を収集し、必要があれば規制の見直しを行う
国税庁も海外の規制強化を踏まえ、アルコール類を輸出する事業者に対して輸出先のBPA関連ルールを確認するよう指導しました。同時に、必要に応じてBPAフリーの容器やキャップの使用を推奨しています。
日本では欧米ほど厳しい規制はありませんが、安全性を意識したBPAフリーの普及を促す傾向が強まっているのが現状です。
BPAフリーは必ずしも安全とは限らない
BPAフリーは必ずしも安全とは限らない

BPAの健康リスクが懸念されるなか、多くの国や企業ではBPAフリーの表記がある製品が増えています。しかし、BPAフリーの表記があるからといって、必ずしも安全性が保証されているわけではありません。
BPAの代替として採用されるBPSなどの物質も、ホルモンかく乱作用を持つ可能性があるとの研究結果が一部で報告されています。消費者はBPAフリーのラベルだけでなく、代替物質やその安全性についても注意深く確認しましょう。
特に乳幼児向け製品や食品包装はリスクを抑えるためにも、素材選びにいっそう慎重になるのが望ましいです。
まとめ
まとめ
長年にわたって幅広い分野で利用されてきたBPAは、健康リスクが懸念されるようになり、各国で強い規制の対象となりました。ただし、BPAを含まない素材に置き換えたからといって、すべての安全性が自動的に保証されるわけではありません。代替物質にも注意を払いながら、製品の素材や製造背景をしっかり確認することが大切です。
食品を海外へ輸出する場合は、BPAに関する規制が厳しい国が多いため、容器や包装材の基準を十分にクリアしなければなりません。
日硝実業では、国内外の豊富な購買ネットワークを活かし、BPAフリー容器の調達に積極的に取り組んでおります。食品の安全性と国際基準への適合を考える企業のご担当者様は、ぜひご相談ください。
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