食品衛生法では、食物を梱包する容器や食材に触れる機材についても、安全性を確保するための厳しいルールが定められています。販売事業者、製造業者を含め、飲食に関するすべての事業者はその内容を理解しておかなければいけません。
この記事では、食品衛生法における器具・包装容器の定義や2018年の食品衛生法の改正、罰則、ポジティブリスト制度についてご紹介します。
- 食品衛生法における食品用器具・容器包装のルール
- 2018年の食品衛生法の改正の内容
- 食品衛生法に違反した場合の罰則
食品衛生法における器具・容器包装とは
食品衛生法における器具・容器包装とは

食品衛生法第4条において、器具と容器包装は以下のように定義されています。
④ この法律で器具とは、飲食器、割ぽう具その他食品又は添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列、授受又は摂取の用に供され、かつ、食品又は添加物に直接接触する機械、器具その他の物をいう。ただし、農業及び水産業における食品の採取の用に供される機械、器具その他の物は、これを含まない。⑤ この法律で容器包装とは、食品又は添加物を入れ、又は包んでいる物で、食品又は添加物を授受する場合そのままで引き渡すものをいう。
器具・容器包装には、具体的には以下のようなものが該当します。
種類 | 具体例 |
器具 | 保存用の箱コンテナ製造・加工装置コンベア食器調理用器具はしスプーン |
容器包装 | 箱袋瓶缶ペットボトルトレイ蓋 |
食品衛生法における器具・容器包装には、保存箱やペットボトル、トレイ、蓋などだけでなく製造・加工装置やコンベアなど、製造・加工段階で食品や添加物に触れるものも含まれる点を押さえておきましょう。
食品に使用される器具や容器包装は、食品衛生法により安全性の確保が図られており、食品衛生法に違反した際は罰則が適用されます。器具や容器包装を直接販売する事業者だけでなく製造・加工段階も対象になるため、食品衛生法は食品事業者全般が把握しておかなければいけません。
食品衛生法における器具・容器包装の基準
食品衛生法における器具・容器包装の基準
ここからは、食品用の器具・容器包装がクリアすべき基準について解説します。基準は取り扱う食品によって異なり、乳製品を取り扱う際には特に注意が必要です。
基準の対象
基準の対象
食品衛生法では、器具・容器包装の規格基準は「乳および乳製品用」と「一般食品用」にわかれています。
乳および乳製品用ではない「一般食品用」の器具・容器包装は、次項で解説する一般規格基準をクリアしておけば原則として問題ありません。
一方、乳および乳製品に使用する器具・容器包装は、一般規格基準にくわえ「乳等の器具若しくは容器包装又はこれらの原材料の規格及び製造方法の基準」をクリアしなければいけません。
乳製品に厳しい基準が設けられている理由は、乳および乳製品は栄養価が高く、乳幼児や病弱者が口にする機会が多いため、雑菌が混入して繁殖した場合の危険性が高いからです。
乳製品を取り扱う可能性がある器具・容器包装を製造または使用する際は、規格基準をクリアしているかどうかを確認しましょう。
参考:乳及び乳製品に用いられる容器包装の規格基準の改正について
一般規格基準
一般規格基準
食品衛生法により、有毒・有害な物質の含有および付着により人の健康を損なうおそれがある容器包装の製造、輸入、販売等は禁止されています。
また、食品衛生法(昭和22年法律第233号)の第7条、第10条などに基づき定められた「一般規格基準」(食品、添加物等の規格基準)に適合しない器具・容器包装も、製造、輸入、販売等ができません。
一般規格基準では、器具・容器包装は以下の6つの項目に適合することが求められています。各項目と内容は下表のとおりです。
項目 | 内容 |
原材料一般の規格 | 主に器具・容器包装全般に使用される材料の含有量や使用禁止材料について |
試験法 | 以下の試験方法について強度試験蒸発残留物試験モノマー試験など |
試薬・試液など | 試験で用いる試薬・試液などの条件について |
原材料の材質別規格 | 器具や容器包装に使用するガラスや合成樹脂などの原材料別に実施する試験法・試験の条件について |
用途別規格 | 加圧加熱殺菌食品や清涼飲料水など用途別の規格について |
製造基準 | 原材料や使用目的別の器具・容器包装を製造する際の条件について |
市場で販売されているはしや鍋などの器具や食材トレイ、お菓子の袋などの容器包装は、原則として一般規格基準をクリアしたものとなります。
2018年の食品衛生法改正で変わった器具・容器包装のルール
2018年の食品衛生法改正で変わった器具・容器包装のルール
2018年に食品衛生法が改正され、器具・容器包装に関するルールも変更になりました。なかでも大きな変更があった、ポジティブリスト制度とネガティブリスト制度について解説していきます。
ポジティブリスト制度の導入
ポジティブリスト制度の導入
2018年の食品衛生法改正により、食品用器具や容器包装に関する規制にポジティブリスト制度が導入されました。
ポジティブリスト制度導入前は、ネガティブリスト制度が使用されていました。ネガティブリスト制度は、有害な成分を列挙してその使用を禁止する方式です。
新たに登場する化学物質の安全性の確認や、原料としての使用の可否の判断には時間がかかります。そのため、ネガティブリストへの掲載の対応が遅れ、結果として、食品や容器の安全性を確保しにくいという課題がありました。
こうした背景から、安全性が確認された物質のみ使用を許可する「ポジティブリスト制度」の導入が採用されたのです。
使用可能な素材の明確化
使用可能な素材の明確化
ポジティブリスト制度の対象となるのは、食品に接触する合成樹脂製の器具・容器包装です。
ポジティブリスト制度では、国が安全性を確認し、使用可能な物質のみがリスト化されています。新しい化学物質が誕生し、それがたとえ有用であっても、安全性が確認されてポジティブリストに掲載されていなければ使用できません。
ポジティブリスト制度により、食品用容器に使われる材料の安全基準が統一され、関連業者は明確な基準のもとで材料選定を行えるようになりました。結果として、材料に使用される添加物やモノマーの厳格な管理が行われ、流通する製品の品質も向上し、消費者も、安全性が高い製品を選択できるようになりました。
なお、ポジティブリスト制度の対象となる合成樹脂製の器具・容器包装の主な材料とその用途例は以下のとおりです。
対象の合成樹脂 | 概要 |
ポリエチレン(PE) | 食品用のラップ、ペットボトル、食品用保存容器 |
ポリプロピレン(PP) | カップ麺の蓋、食品用タッパー |
ポリメチルペンテン(PMP) | 熱に強いラップ、タッパー、飲料容器 |
ブタジエン樹脂(BDR) | 食品用チューブ、ラップ、包装フィルム |
ポジティブリストについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食品衛生法における器具・容器包装のルールに違反した場合の罰則
食品衛生法における器具・容器包装のルールに違反した場合の罰則
食品衛生法の器具・容器包装のルールに違反した際は、以下の3段階のステップを経て最終的な処分が下されます。
- 食品衛生法上の器具・容器包装のルールに反した管理がされていると判明した場合、保健所などから口頭や書面にて改善指導が行われる
- 改善指導したにもかかわらず改善が図られないと判断された場合、営業の禁止または停止の行政処分が下される
- 行政処分になったにもかかわらず営業を行った場合は、懲役または罰金に処される可能性がある
食品衛生法の罰則は、違反したからといって即刻懲役刑に処されるわけではありません。まずは改善指導が行われるため、万が一改善指導を受けた際は、速やかに指導内容をもとに対応しましょう。
改善指導に従わなかった場合には1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられます(食品衛生法第83条)。
なお、各都道府県で別途要件や罰則規定を定めているケースもあります。あらかじめ保健所などに問い合わせて確認しておくとよいでしょう。
器具・容器包装に関する食品衛生法遵守のために必要なこと
器具・容器包装に関する食品衛生法遵守のために必要なこと
器具・容器包装に関する食品衛生法順守のために以下の3点に気をつけましょう。
- 都道府県知事への届出を行う
- 関連事業者と適切な情報連携を行う
- 製造・品質管理体制を整備する
順番に解説していきます。
都道府県知事への届出を行う
都道府県知事への届出を行う
食品衛生法の改正以前は、自治体は器具・容器包装の製造事業者を把握できていませんでした。
しかし、食品衛生法の改正にともない2021年6月1日から営業届出制度が施行され、合成樹脂を使用した食品用器具・容器包装の製造・加工業者に対して、都道府県知事への届け出が義務付けられました。
自治体が販売事業者だけでなく製造・加工業者も把握できるようになり、食品衛生法が順守されているかどうかのチェックが以前よりもしやすくなったのです。
届出がないまま営業していると食品衛生法に違反していることになります。忘れずに届出を行いましょう。
なお営業届の申請は、厚生労働省のホームページに設置されている「食品衛生申請等システム」から可能です。申請内容や方法の詳細については、管轄の保健所に問い合わせてください。
関連事業者と適切な情報連携を行う
関連事業者と適切な情報連携を行う
食品衛生法の改正により、器具・容器包装製造業者は、食品販売業者へポジティブリストに適合している事実を説明することが義務付けられました。
説明方法の指定はありませんが、「事後的に確認する手段を確保する必要がある」とされているため、口頭だけでの説明は認められません。書面または電子メールでのやりとりが推奨されます。
製造業者から食品販売業者への情報伝達の手段としては、例えば以下が挙げられます。
- 契約締結時に提出される仕様書
- 入荷時の品質保証書
- 業界団体から送られた確認証明書
関連事業者とのやり取りの記録は適切に保管しておきましょう。
製造・品質管理体制を整備する
製造・品質管理体制を整備する
ポジティブリスト制度の対象となる物質を扱う食品用器具・容器包装製造事業者は、適正製造管理規範(GMP:Good Manufacturing Practice)を遵守しなければいけません。
GMPは、品質・安全性の確保を図るための規範や基準です。製造工場の衛生管理や使用する機器・器具、従業員の教育・管理、使用する水や氷など、細部にわたり管理項目が決められています。GMPにしたがって器具・容器包装を製造・使用することで、アレルギー物質の混入や細菌やウイルスの混入による食中毒の発生を防げます。
食品用の器具および容器包装の製造・加工に関する制限は年々厳しくなっており、食品販売業者にとっては、信頼できる製品および企業の選定が急務といえるでしょう。
安全性が高い容器包装を探す際は、GMPの遵守や届出の有無を確認するとともに、「JFS(ジャパンフードセーフティ)」などの適合証明の取得を確認し、信頼性を見極めることが大切です。
まとめ
まとめ
食品衛生法は食品に関する法律で、器具・容器包装についても定められています。2018年に法改正があり、合成樹脂製の器具・容器包装はポジティブリストに記載されている原材料しか使えなくなりました。
また、合成樹脂製の器具・容器包装の製造会社は届出が必要になり、届出がない場合は法律違反となります。
日硝実業は2022年に西宮北物流センターにて「JFS(ジャパンフードセーフティ)」の適合証明を受けており、容器包装の製造メーカーとしての実績があります。
販売力を高められるオリジナル容器の作成も承っておりますので、興味のある方は以下のリンクよりお問い合わせください。
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