粉体加工とは、食材などの原料を粉末や顆粒状にする技術です。食品の長期保存やコスト削減、フードロス削減にも貢献するため、近年重要性が増しています。
この記事では、粉体加工の基礎知識やメリット、加工方法、課題について詳しく解説します。新たな商品開発のヒントを探している企業のご担当者様は、ぜひご覧ください。
- 粉体加工の意味
- 粉体加工を行うメリット
- 代表的な粉体加工方法とその特徴
粉体加工とは
粉体加工とは

粉体加工とは、野菜や果物、魚介類といった固体の食材原料を、粉末や顆粒状に加工する技術を指します。代表的な方法として、液状の原料を噴霧して乾燥させる「スプレードライ製法」や、凍結させてから真空状態で水分を抜く「フリーズドライ製法」などが挙げられます。
粉体加工の目的は、原料を細かくすることだけではありません。物質を粉末状にしてほかの原料と混ざりやすくしたり、化学反応を促進させたり、口当たりを滑らかにしたりと、素材が持つ特性を最大限に引き出すのが本来の目的です。
また、粒子の大きさや均一性は、最終製品の味、香り、溶けやすさなどに直結するため、非常に高い精度と加工技術が求められます。
粉体加工を行うメリット
粉体加工を行うメリット

粉体加工には、多くのメリットがあります。素材の水分を飛ばして粉末や顆粒状にすると、食材の活用の幅が広がり、保存性や運搬効率も向上します。
また、食品ロスの削減やコスト抑制にも貢献し、製品開発において新たな可能性を生み出すでしょう。
ここからは、粉体加工がもたらす4つのメリットについて詳しく解説します。
用途を広げられる
用途を広げられる
粉体加工を施すと、素材がほかの原料と混ざりやすくなり、活用の幅を大きく広げられます。例えば、野菜や果物を粉末化すれば、パンやお菓子の生地に練り込んだり、スープやドレッシングに溶かし込んだりと、さまざまな加工食品へ応用が可能です。
また、醤油やみりんといった液体の調味料を粉末化すれば、ふりかけやスナック菓子のシーズニングとして活用でき、携帯性や計量性も向上します。粉体加工は素材の特徴を活かしながら、従来にはなかった新しい商品開発を実現できるでしょう。
長期保存しやすくなる
長期保存しやすくなる
粉体加工は、水分を取り除くため、微生物の繁殖を防ぎやすくなり、長期保存が可能になります。
食品が腐敗する主な原因は、水分が多い環境によるカビや細菌といった微生物の増殖です。粉末化することで水分活性を低く抑え、腐敗リスクを最小限にできます。常温保存や流通が可能となり、冷蔵・冷凍設備のコスト削減にもつながります。
賞味期限の延長とコスト削減の両面から、業務用食品や加工原料の管理にも適しているといえるでしょう。
素材を余すことなく活用できる
素材を余すことなく活用できる
粉体加工技術を活用すれば、これまで利用が難しかった部位も含めて、素材を丸ごと有効活用できます。例えば、野菜の皮や果物の種子、芯など、調理工程で廃棄されがちな部分を粉末化して製品に練り込めば、消費者は素材の栄養を無駄なく摂取できるでしょう。
また、水分が除去されると栄養が凝縮され、吸収効率が高まる素材もあります。さらに、傷や形が不揃いといった理由で出荷できない規格外の農産物も原料として活用可能です。
粉体加工は食品ロスの削減や原料コストの抑制につながるうえに、サステナブルな製品づくりを実現します。
運搬しやすくなる
運搬しやすくなる
原料を粉体加工すると、体積が小さく軽量になり、運搬効率が向上します。粉末状の製品は保管に必要なスペースやトラックでの輸送コストも削減可能です。
特にもともと水分含有量が多い野菜や果物、液体調味料などは、粉体加工による軽量化・コンパクト化の効果が大きいでしょう。
また、粉末製品は容器内での安定性が高く、液体のように漏れたり、固形物のように衝撃で破損したりするリスクが低いのもメリットです。粉末状の商品は、業務用の加工原料としても扱いやすく、在庫管理の効率化にもつながります。
粉体加工の方法
粉体加工の方法
粉体加工には、素材の特性や求める品質に応じてさまざまな方法が存在します。どの製法を選択するかによって、最終製品の風味や色、溶けやすさ、栄養価などが大きく変わるため、自社製品に合った技術を見極めましょう。
ここからは、食品の粉体加工で広く用いられる「スプレードライ製法」と「フリーズドライ製法」について解説します。
スプレードライ製法
スプレードライ製法
スプレードライ製法(噴霧乾燥法)は、液体の原料を熱風が吹き込む乾燥室内に噴霧し、水分を瞬間的に蒸発させて粉末化する方法です。この製法で得られる粉末は、粒子が細かく、水やお湯に溶けやすい性質のパウダー状になるのが特徴です。
スプレードライ製法は、熱に触れる時間が数秒から数十秒と非常に短いため、熱による品質劣化を最小限に抑えられます。
一方で、高温処理の工程を経るため、素材本来の繊細な香りや風味が一部失われる可能性もあります。
フリーズドライ製法
フリーズドライ製法
フリーズドライ製法は、原料を急速に凍結させたあと、真空に近い状態で氷を直接水蒸気に変えて水分を除去する方法です。「昇華」というプロセスにより、加熱せずに乾燥させられます。
加熱工程をともなわないため、ビタミンなどの熱に弱い栄養成分や、素材本来の香り・風味をしっかり保持できるのが大きなメリットです。
ただし、原料を凍結させてから長時間かけてじっくりと乾燥させるため、スプレードライ製法に比べて製造に時間がかかり、エネルギーコストも高くなる傾向があります。
粉体加工の課題
粉体加工の課題

粉体加工は多くのメリットをもたらしますが、すべての素材が粉末状に加工できるわけではありません。例えば、水分・糖分・油分を多く含む素材は、粉砕時に熱で溶けてペースト状になったり、粒子同士が付着してダマになったりすることがあります。
また、繊維質が多い野菜や弾力性のある素材は、均一な粒子にするのが難しく、粒度が粗くなってしまう場合もあります。蜂蜜のように凍りにくい性質を持つ素材は、フリーズドライなど一部の製法では加工が困難です。
さらに、粉体製品は加工後の取り扱いにも細心の注意が必要です。多くの粉末は空気中の湿気を吸いやすく、放置すると固まってしまったり、風味や品質が劣化したりするリスクがあります。
製品の品質を長期間保つためには、中身の特性に合わせた容器選びが重要です。特に、消費者が「ふりかける」「混ぜる」といった動作をストレスなく行えるような使いやすさや、内容物を湿気から守る気密性・防湿性に優れた容器仕様が求められます。
こうした課題をクリアするには、素材の特性に応じた加工法の選定と、最適なパッケージを設計・提案するノウハウを一貫して提供できる体制が不可欠です。
まとめ
まとめ
粉体加工は、固体原料を粉末や顆粒状にする技術です。素材を粉末化することで、ほかの原料と混ざりやすくなり、常温での長期保存や輸送効率の向上といったメリットがあります。
しかし、素材の特性によっては粉体加工が難しく、湿気によって品質劣化する課題もあります。こうした課題をクリアするには、素材の特性に応じた最適な加工方法と、粉末を守る容器設計の両面からの対策が必要です。
日硝実業の「粉体プロジェクト」では、長年培ってきた容器の知見を活かし、液体の粉末化から、製品の特性を最大限に活かす容器のご提案まで、一貫したサポートをご提供します。粉体の受託充填も承っております。粉体加工に関するお悩みやご要望がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。













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